Return Of The Prodigal Son / Stanley Turrentine

Return of the Prodigal Son

2008年に出たブルーノートの発掘盤。といっても大方はすでに何らかの形で表に出ていて、完全未発表は3曲だけだと思う。1967年の6月と7月に行われた2回のセッションにおける録音をまとめたもので、後者はアルフレッド・ライオンが自らプロデュースした最後のセッションとなった。

60年代も後半にさしかかり、当時のスタンリー・タレンティーンは、ビッグバンドかそれに準ずる人数を擁した豪華なバンドをバックに(だいたいデューク・ピアソンがアレンジを書いている)当節流行のR&Bやソウルのヒット曲をひとくさり、というタイプの企画を多くこなしていた。正直私のような日本人からすると、当時なぜそこまで売れたのか今ひとつピンとこないのだが、ジュークボックスやラジオではとても評判が良かったそうで、たぶんそのころのブルーノートの稼ぎ頭だったと思われる。この種のサウンドは黒人のみならず白人にもアピールしたようで、70年代のクリード・テイラー・プロデュースによる一連のCTI録音も、ようするにこの延長線上にある。

この種のラージ・アンサンブルもの(ウィズ・ストリングスものも含む)だと、主役の一人舞台なくせに、そいつ自身はなんだかんだ言ってメロディを吹くだけだったりしてがっかりということもあるが、そこはさすがに真面目な(たぶんそう)タレンティーンだけあって手抜きはあまりなく、しっかりアドリブもとる(ことが多い)。スリルはあまりないものの、やはりこれはこれで楽しい贅沢な音楽で、特に原稿が書けないときのBGMにはぴったりだ。

このアルバムも、「放蕩息子の帰還」やら「ドクター・フィールグッド」やら「Ain’t No Mountain High Enough」やらバカラック・ナンバーをやったりして、それなりに盛り上がるのだが、全体の印象としては淡いというか、可も無く不可も無いという感は否めない。しかしですな、 **9曲目の「You Want Me To Stop Loving You」が異常に良いんですよ。**元々私はあまり知られていないソウルの名曲かなにかだと思っていたのだが、どうやらワイルド・ビル・デイヴィスの曲らしく(作曲者本人の演奏は聴いたことないんだけど)、今まで誰もカバーしないのが不思議なくらいの名曲だと思う。前もこの曲についてはなんか書いたような覚えがあるのだが…。

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