Capchin Swing / Jackie McLean

Capuchin Swing

本格的にアヴァンギャルドにかぶれる前のジャッキー・マクリーンのブルーノート録音というとSwing Swang Swingin’ が有名だが、これはその次に出したアルバム。前者はレパートリーをスタンダード・ナンバーで固め、マクリーンのワンホーン・カルテットでベースがジミー・ギャリソンという陣容だったが、こちらはレパートリーがオリジナル曲中心、トランペットにブルー・ミッチェルが入ったクインテット編成で、ベースがポール・チェンバースという違いがある。

マクリーンは好きなので主要な作品はあらかた聞いたつもりだったのだが、このアルバムは今まで聞いたことがなかった。意図的に避けていたというわけではなくたまたまなのだが、盲点に入っていたのですね。で、ふと思い立って聞いてみたらなかなか良かった。この時期のマクリーンはまさに脂が乗り切っていて(この次に出したのが傑作Jackie’s Bag )悪いわけがないのだが、Swing, Swang Swingin’やJackie’s Bagと比べると曲の魅力が若干弱いので、相対的に地味ということは言えるかもしれない。ただ、演奏そのものの密度はとても濃厚だし、なんといってもマクリーンのアルトの音色が張りがあって最高だ。

前作でもピアノを弾いていたウォルター・ビショップ・ジュニアは、本作ではピアノに加え2曲を提供して作曲面でも貢献、さらには1曲だけマクリーン抜きのピアノ・トリオで「Don’t Blame Me」を演奏するなど大フィーチュアされている。ピアノ・トリオの名盤Speak Lowで有名なビショップは後年音楽理論を勉強しすぎて機械的なフレージングが目立つようになり、演奏から魅力というか色気がなくなってしまったというある意味悲劇的な人だが、ここでの肩の力がほどよく抜けた演奏を聞くと、この時期にもう一枚ピアノ・トリオ・アルバムを作っていれば、と惜しまれてならない。

ジャケット写真でマクリーンと一緒に写っているサルはカプチン、いわゆるオマキザルというやつで、アルバム・タイトルの由来でもあるが(最近ジャスティン・ビーバーが公演先のドイツに持ち込もうとして揉めていた) 、これは当時の彼のペットでミスター・ジョーンズというらしい。ジョーンズもモンキーもヘロインの隠語で、重度のヘロ中だったマクリーンがこれを肩に乗せている(monkey on one’s shoulderというのは「厄介なもの」とか「止められない悪習」という意味)というのは、これはやっぱり高度なギャグなんでしょうかね。

YouTubeにあったタイトル曲。下敷きになっているのはStar Eyesですかね。

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