Charlie Parker Records: The Complete Collection Vol. 3

Charlie Parker Records: The Complete Collection

謎のレーベルCharlie Parker Recordsの話の続き。ディスク3はマンデル・ロウによる映画音楽に加え、怪人ユセフ・ラティーフによるハードバップ作を収録している。

ディスク3の前半は1962年の映画「Satan In High Heels」のサウンドトラックである。映画はDailymotionに全編がアップロードされていたが、ざっと見た限りでは、ストリッパーが男たちをだしにしてのし上がろうとするものの、最後失敗して破滅する、というような、当時はセンセーショナルだったのかもしれないが今となってはありがちな話のようだ。

主演のメグ・マイルスは歌手としても活動した人で、Just Meg And Meというヴォーカル・アルバムがある。

作編曲のマンデル・ロウはギタリストだが映画音楽もいくつか手がけており、これもその一つ。ロウはどうもドリス未亡人と親しかったらしく、Charlie Parker Recordsではいくつかのセッションでアレンジを提供したり、実質的にA&Rとして働いていたと思しい。

音楽は1961年11月30日と12月22日に分けて録音されたようで、メンツ的には大編成、当時のニューヨークの一流スタジオ・ミュージシャンを総動員という感じになっている。特にエディ・コスタのヴァイヴが随所に利いているが、まあしょせん映画音楽なのでスリルには乏しい。それでもロウは様々なスタイルのアレンジをうまく書き分けていて、「ルパン三世」とかあの辺が好きな人なら十分楽しめるだろう。実際、Charlie Parker Recordsの諸作の中では最も良く売れたらしい。

後半のユセフ・ラティーフ「Lost In Sound」はある意味でなかなか謎めいたセッションである。1961年8月14日の録音で、メンツはリーダーであるラティーフのテナーサックス、ヴィンセント・ピッツ(これが唯一の録音らしい、写真)のトランペット、ジョン・ハーモン(Hormonと書いてあるがホルモンではあるまい、たぶんこの人)のピアノ、レイ・マッキンリーのベース、ジョージ・スコット(ミンガスのPre-Birdにラティーフと一緒に参加していた)のドラムスというごく普通のワンホーン・カルテット編成で、ごくごくオーソドックスなハードバップを快調に演奏している。なおブックレットには書かれていないが、Blue RockyとTrain Stopの2曲ではスコットではなくクリフォード・ジャーヴィスがドラムスを叩いているらしい。確かに言われてみればそんな風に聞こえる。いずれにせよ、他にこのメンツでの録音はないし、ラティーフの当時のワーキング・バンドというわけでもなさそうだ。

それにしても、この時期のラティーフが「普通の」ハードバップをやっているのはなんだか変ではある。時期的にはRiversideレーベルを離れてPrestigeにEastern SoundsInto Somethingといった生涯の傑作を吹き込む直前で、オーボエやらフルートやらセブンアップの瓶やらを吹いて中近東風味の音楽をやっている人、というイメージが強かったのだが、ここではテナー一本に専念。どういう経緯でCharlie Parker Recordsに吹き込んだんでしょうねえ。内容的にはこれはこれで優れているけれど…。テナーの吹きっぷりもいいが、とりわけ作曲の才能が目立つ。マイナー・キーの良い曲ばかりだ。サイドマンも、まあ一流とは言いがたいがけなげに頑張っていると思う。

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