Theme Time Radio Hour With Your Host Bob Dylan

ボブ・ディランのテーマ・タイム・ラジオ・アワー

数年前、正確には2006年から2009年にかけて、ボブ・ディランがアメリカの衛星ラジオ向け番組でなぜかDJをやっていた、という話は知っていて、いくつかの回に関しては若干アレな手段で聞いたこともあった。Amazonなどを検索すると「Theme Time Radio Hour」の名を冠したCDが何枚か見つかるが、それらは番組で取り上げられた曲の音源のみ収録で、ディランの語りは入っていないのである。

全100回、日本でも全部聞けないかなあと思っていたところ、この4月からは、ピーター・バラカン氏が陣頭指揮を取るようになったせいか魅力的な番組が増えたInterFMで週に1エピソードずつ(木曜20:00〜21:15、日曜再放送22:00〜23:15)放送されるようになり、喜んで聞いている。残念ながら私の部屋ではInterFMはおろかFMラジオ放送自体ほとんど受信できないのだが、Radikoさまさまである。

「テーマ・タイム」と銘打っているだけあって、毎回「天気」だの「金」だの「母」だのといったテーマが設定され、それに応じた選曲と、テーマと関係あるようなないようなディランのユーモラスな語りが展開される。歌うときのディランは歌詞が難解な上に声が潰れていたりしてひどく聞き取りにくいのだが、DJとしてはしゃがれてはいるものの極めて明快な語り口で、聞き取るのはそんなに難しくはないだろう。さらに、もともと1時間番組だったのが、InterFMでの放送では最後に15分間のおまけがついて、バラカン氏がその回の内容を日本語で補足してくれる。番組のウェブページにもいろいろ載っている。

番組でかかる曲はオールジャンルで一癖あるものが多いが、大体において私の好みのものばかりなのででうれしくなる。ディラン自身相当な音楽マニアだが、優秀なコンサルタント・チームもついていたようだ。

音楽の内容を言葉で説明するのは知識さえあれば簡単なのだが、音楽の魅力を言葉で伝えるのは難しい。というか、原理的には不可能だと個人的には思っているのだが(言葉で全て伝えられるならそもそも音楽など必要ない)、ディランの語りには、語り自体の魅力に加え、この曲おもしろいな、こういう音楽をもっと聞いてみようかな、とリスナーに思わせるだけの説得力がある。こういうことができるのがラジオの魅力なんでしょうね。

comments powered by Disqus