Plays Tadd Dameron / Barry Harris
Elemental Musicという2012年設立の新しいレーベルが、Xanadu Master Edition Seriesと銘打って、Xanaduレーベルの体系だった再発を手がけるそうだ(プレスリリース)。とりあえず今年から来年にかけて25作ばーんと出すらしい。喜ばしいことである。有り難いことである。奇特なことである。
Xanaduは70年代ジャズの良心とでも言うべきレーベルで、派手さの全く無い、死にそうに渋いメンツを揃えたラインアップがたまらないのだが、特にバリー・ハリスが参加しているものにはまずハズレがない。というか、リーダーがまるで無名でも、ジャケットのデザインに全くやる気が見られなくても、ピアノの調律がやや狂っていても、ベースが電気アンプでびょんびょんいっていても、この時期のバリー・ハリスが入っているだけでプラス50000点である。
日本ではかつて徳間ジャパンがXanaduの諸作品をかなりCD化していて、私も喜んで買い集めていたのだが、基本的に限定版紙ジャケという形態だったので、今では入手が難しい。中古でもあまり出回っていないような気がする。海外ではPrevueという謎のレーベル(Classic Recordsの子会社?)がいくつかCD化していたこともあったが、これももう潰れたのであろう。さらに最近では、The Orchardとかいう会社が権利を持っていたようで、公式ウェブサイトらしきものも今のところThe Orchardがやっているようなのだが、あまりやる気は見られなかった。ElementalはこのThe Orchardと組んでいて、オリジナルのプロデューサーだったドン・シュリッテンも監修で絡むようなので、大いに期待できる。
とりあえず6月末に出たものの中では、バリー・ハリスのこれが目を惹く。1975年の録音で、世代的にはハードバッパーだが中身としては遅れてきたビバッパーとでも言うべきハリスが、ビバップ最高の作曲家タッド・ダメロンの名曲を弾くという、もうそれだけで名盤確定みたいな好企画である。私が持っている古いCDには全体にサーっというノイズが乗っていて音質的にいまいちだったのだが、今度の再発では直っているだろうか。
ハリスというのは不思議な人で、たぶん純粋に持ち合わせた才能はバド・パウエルの半分くらいだと思う。同世代のピアニストたちと比べても、スタイルの面で(晩年の)パウエルにより多くを負っているのだが、パウエルが発散していた神がかり的な凄みはまるでない。ではパウエルの劣化コピーなのかというとそんなことはなく、ハリスをコピーキャットとかパクリ呼ばわりする人は見たことがない。似ているとか似ていないとか言うのとは別に、音楽的に一本筋が通っているのである。この作品などはそういったハリスの美点がストレートに出ていて、特にバラードの「Soultrane」は絶品だ。
問題の「Soultrane」。バラードの解釈って難しいんですよ。メロディを甘く弾くだけなら簡単なのだが。
こちらは原曲のほう。ダメロンに曲を捧げられたコルトレーンの優雅な吹き回しが実に素晴らしい。
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