2018年に出たジャズの個人的ベスト10

一応2018年に出たジャズのベスト10を選んでおこうと思う。番号は振ってあるが必ずしも順位を意味しない。思い出した順である。今年はかなり豊作で、選から漏れた(というか単に私が忘れている)ものの中にも優れた作品がいくつもあった。最近は昔ほど新譜を買わなくなったので、捕捉できていないものも多くあるだろう。他に面白いものがあれば教えてください。

と、2015年にやったときの口上をそのままパクってしまったが、正直最近新譜はBandcampしか見てないんですよねー。

カマシ・ワシントンとか、ウェイン・ショーターとか、ゴーゴーペンギンとか、誰でも挙げそうな奴はあえて外してみた。もちろんこれらも悪くないですよ。

1. Close But No Cigar / Delvon Lamarr Organ Trio

Close but No Cigar

私のFacebookを見ている人はご存じだろうが、たまたま夏に用事でサンノゼにいたときこのバンドを生で見る機会があって、狂喜したものである。正調オルガン・ジャズは私が最も好むジャンルなのだが、ブラック・コミュニティの消滅と共に消えたと思っていて、まさか今でもこんなにオーセンティックに演奏できる連中がいるとは思わなかった。普段はシアトルが拠点のようだが、またライヴで見たいなあ。

2. You’re Driving Me Crazy / Van Morrison & Joey Defrancesco

You're Driving Me Crazy

これはまあ、元々私がヴァン・モリスンのファンだから、という程度のものではあるのだが、長いことヴァン・モリスンのオルガンといえばジョージー・フェイムで、別にフェイムが悪いというわけではないんだけれど、やはりオルガン奏者としての力量はジョーイ・デフランセスコのほうが上だと思うのである。御大は余裕綽々の歌いっぷりで、もう72歳なのにぜんぜん声が衰えていないのがよい。調子っぱずれに聞こえるのは昔からです。

3. We Out Here / V. A.

We Out Here

ここ数年ロンドンを拠点とする若手ジャズメンというのが増えているようで、そんなに上手いとか斬新ということはなく、線もやや細いのだが、ブレグジット等で閉塞感のある政情を反映してか、知的な繊細さと暴力性が同居した演奏が多くて面白いと思う。今年になって、主要な連中を集めた手頃なコンピが出た。

4. Bristopia / Get The Blessing

Bristopia

イギリス・ブリストルが拠点のバンドらしく、だからブリストルのディストピアでブリストピアなのだが、なんとも形容の難しいバンドで、まあカテゴリとしてはジャズなんですかね。私は結構気に入っている。

5. Your Queen Is A Reptile / Sons Of Kemet

ユア・クイーン・イズ・ア・レプタイル [Explicit]

これもロンドンの連中だが、アフロビートやダブっぽい不穏なリズムがうごめくなかリーダーのシャバカ・ハッチングスのサックスやクラリネットが自由自在に動き回っていて、なかなか楽しい。アルバムのタイトルも曲名もメッセージ性に富んでいて、なかなか骨があるところを見せている。

6. ROOM / jizue

ROOM

これは日本のバンドで、京都が拠点らしい。ジャズというか、ロックというか、分類しにくいのだが、展開が読めずなかなか面白い。正直に言えば私はキメキメのプログレみたいなのが息苦しくてあまり好きではないのだが、これは特に抵抗なく楽しめた。

7. Live at the Village Vanguard Vol. 1 / Steve Coleman & Five Elements

Live at the Village Vanguard Vol. 1

M-BASEの総帥スティーヴ・コールマンも今年パリで初めてライヴを見る機会があり、それがとても良かったのである。一時期の過剰な暗さや難解さは消え、バンドの演奏もタイトで、そこかしこに揺るぎなき確信が感じられた。コールマン史上最もとっつきやすい演奏だと思う。そろそろ日本に来ませんかねえ。

8. Universal Beings / Makaya McCraven

ユニバーサル・ビーイングス【初回限定スペシャルプライス / 日本盤ボーナストラック2曲収録 / 解説付 / 紙ジャケット仕様 / 国内盤】

私はマカヤ・マクレイヴンを長いこと誤解していて、サウンド・クリエイションと言いますか、編曲や編集が本業でドラムスは副業だと思い込んでいたのだが、ライヴを聞いたらとんでもないパワードラマーだった。ちょっと前までは割と頻繁に日本に来ていたらしいのだが(池袋でライヴをやったとか言っていた)、最近は世界中でひっぱりだこのようで、気軽に聞けなくなる前にライヴを見ておくといいですよ。

9. Code Girl / Mary Halvorson

Code Girl

メアリー・ハルヴァーソンは相変わらず結構なハイペースで新作を出しているが、どれも例によって素っ頓狂な音楽をやっていて、目が離せない。今回はヴォーカルが入り、少しは分かりやすくなったかと思ったらいよいよ訳が分からない感じである。アンブローズ・アキンムシーレもいいですね。

10. Freebird / Walking Distance

Freebird

今回のチョイスの中では最も普通のジャズっぽい演奏で、曲名から分かるようにチャーリー・パーカー・トリビュートと言えばまあそうなのだが、なんとも変なアルバムである。私は基本的にトリビュートものは故人の冒涜に終わることが多いと思っているのだが、これならパーカーも面白がるだろう。ジェイソン・モランがゲストで入っている。

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