The Summer House Sessions / Don Cherry
これも2021年の発掘もの。
オーネット・コールマンやジョン・コルトレーンとの共演を経て、60年代中盤まではいわゆる「フリージャズ」の範疇に収まる音楽をやっていたドン・チェリーだが、奥さんのモキと娘のネナを連れてスウェーデン・ストックホルムに移住した60年代末以降になると本格的にジャズから逸脱というか、ワールド・ミュージック(と言う言葉はまだ無かったと思うが)のようなものに接近していった。ジャズと(短波ラジオから仕入れた)民族音楽を混ぜ合わせ、マリワナの煙で燻したようなこの時期のチェリーの音楽は個人的に結構好きで、先年ようやく再発されたOrganic Music Societyや永遠のリズムなどはよく聞いたが、これもその流れというか、同時期にストックホルム郊外の別荘か何かでやっていたリハーサルの模様を録音したテープが発見されたということのようである。音質は良いがチェリーが入っているのは前半2曲だけ。まあ1曲20分2曲で40分とかいう世界なので、2つで十分ですよ。
アメリカから流れてきたチェリー、地元北欧の(普段はモダンジャズをやっている)ミュージシャンたち、それにトルコ出身のパーカッショニストという、そもそも言葉もうまく通じなかったのではないかと思われる連中が、手探りでテキトーにやっているだけといえばそれまでなのだが、シンプルなリフの積み重ねから次第に強力なグルーヴが発生してくる様子はなかなか興味深い。聞く人を選ぶ音楽だとは思うが、ジャンルや国境をものともせず世界を大股で闊歩するチェリーの勇姿が眼前に浮かんでくるようで、気持ちのよい演奏だ。
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