The Complete Live at the Lighthouse / Lee Morgan
これも昨2021年に出たジャズ発掘盤。といっても、オリジナルのLP2枚組は1971年、その後CD3枚組の増量バージョンが1996年に出ていて、今回はCD8枚組のコンプリート・バージョンである。Spotifyにもある。
ちゃんと計画されたライヴ盤のコンプリート版というのは、なかなか難しい問題をはらんでいると思う。ジャズに限らずライヴ盤を録るのが前提の出演時は、同じ曲を繰り返し演奏し、その中からベスト・テイクを選ぼうとするからだ。ゆえに数日間、毎セット録音していたとしても、同じ曲が何テイクもあるだけで、おまけに既出のテイクが結局ベストだった、ということになりかねない。
今回のリー・モーガンの1970年ライトハウス・ライヴも、内容はモーガン晩年の傑作として昔から定評があるものだが、3日間、一晩4セットで全12セット、4時間以上の未発表音源、と売り文句だけは勇ましいものの、結局日によってレパートリーに大きな変化があるわけではないし、各テイクにそこまで違いがあるかというと微妙である。しかもCD3枚組が出たときの、大ヒット曲The Sidewinderを(一回だけ)ライヴでやってた!とか、なぜかジャック・デジョネットが1曲だけ飛び入りしていた!というような驚き要素も全く無いので、なんだかなあ、という気分は否めないのである。
音質は若干良くなっているような気もするが、そもそも録音に若干問題があった(たしかピアノとベースが同じトラックに入っていて、どれかだけ音量を上げるとかが出来ないんじゃなかったかな?)ということもあり、これまたあまり驚きはない。あと、これは以前から言われていたことだと思うが、モーガン自身に限っていえば、疲れていたのかクスリの影響か、そんなに調子が良いわけでもなかったりする。
とはいえ、バンド全体としてはタイトで熱気あふれる演奏だし、メンバが持ち寄った曲も良く、20分越えの長尺演奏がつるべ打ちでもあまり聞き疲れはしない。スタイルとしてはやや前向きながらオーソドックスなジャズで、今の若い人が聞いてどう思うかは知らないが、当時のロックのライヴ盤と比べても同時代感があるというか、今聞いても変に古くさくはなっていないと思う。若年寄が何をやっても古くさくなるというのと同じで、結局こういうのは年齢やスタイルというよりも、やっている連中の気の持ちようなのではないかという気もする。
それにしても、完全版と銘打ちつつ、実は、不完全でも録っていたはずのCeora(7/10金曜、第4セット)が抜けているのだが、そもそもテープが残っていなかったんですかねえ。同時期の他のライヴでも演っている曲なので、そこまで残念というわけではないものの、「コンプリート」と名乗るならそのへんこだわってほしいよねえ。
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