Breaking Stretch / Patricia Brennan Septet
発掘ものばかり挙げるのもなんなので、2024年の新録で個人的に気に入っているものを1枚だけ紹介。例によってBandcampで知ったわけですが。
パトリシア・ブレナンはメキシコ生まれで今はニューヨークで活動する女性ヴァイブラフォン奏者。昔メアリー・ハルヴァーソンのアルバムに参加していたというくらいしか知らない人だったが、3枚目のリーダー作となるこれはなかなかおもしろい。ブレナンはヴァイブの演奏だけではなく作曲やアレンジも出来る人だが、その方面ではどことなくセロニアス・モンクやアンドリュー・ヒル、あるいはスティーヴ・コールマンのM-BASEあたりの影響が感じられる。複数のモチーフが同時進行で重層的に絡み合う複雑な作風でとっつきにくいところもあるのだが、パーカッションがかなり前面に出ていることもあって、ラテンやサルサっぽいリズムが単純に気持ちよい。本人だけではなくジョン・イバラゴン、マーク・シム、アダム・オファリルというフロント3人もがんばっていて、特にシムのごりごりしたテナーサックスの音色が効いている。
このブレナンの音楽なんかはそれでも昔ながらのジャズ的緊張感をそこかしこにはらんでいて、まだ「ジャズっぽい」のですけれど、他に最近のいわゆる「ジャズ」とされる音楽を聞いていると、昔のジャズが洋菓子だとすればなんだか和菓子みたいなところがあって、菓子という点では同じだし別に悪いものではないのだが、何か根本的な発想というか美意識というか、言って見れば美学が異なるように思う。その要因が黒人性(の喪失)なのかなんなのか、厄介な問題なのだが、とにかく違うのである。書いていて当人が文章の加齢臭に辟易するというか、老害的偏見であることは重々承知しているが、あんこも良いけどどうしたって俺はビターなチョコが好きなんじゃ、みたいなのありませんか。ないですか…。
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