The New York Contemporary Five

何かと気ぜわしい年の瀬に聞くようなものでもないが、偶然久しぶりに聞いてまた感銘を受けた。昔から好きなアルバムなのである。

ニューヨーク・コンテンポラリー・ファイヴ(NYCF)は1963年の夏から1964年の春にかけて活動した前衛ジャズのグループで、存在したのはわずか1年未満だった。ファイヴという名前の通り、アーチー・シェップ(テナーサックス)、ジョン・チカイ(アルトサックス)、ドン・チェリー(トランペット)、ドン・ムーア(ベース)、J.C.モーゼス(ドラムス)の5人から成るクインテットが基本である。特にリーダーはいなかったようだが、一番知名度の高いシェップがリーダーとして扱われることが多い。そして正式メンバではなかったものの、作曲やアレンジの面でいわば6人目として重要な役割を果たしたのがビル・ディクソン(トランペット)だった。

このグループのキーパーソンというか触媒になったのはデンマーク出身のチカイである。渡欧したシェップやディクソンと知り合って彼らの勧めで渡米、ソニー・ロリンズのバンドを辞めたばかりのチェリーと、エリック・ドルフィーのバンドにいたJ.C.モーゼス、さらにシェップやディクソンとよく共演していたベーシストのムーアを加えてNYCFが結成される。間もなくレコーディングを行うが、チェリーが大遅刻したのでとりあえず4人で録音することになった。これがRufusで、その後到着したチェリーを交えてさらに録音されたのが、NYCFのいわばデビュー盤とも言えるConsequencesである。

ただし、一般的にはNYCFといえば、その後のヨーロッパにおける活動で知られているのではないかと思う。これもチカイが手配したツアーで3ヶ月に及び、1963年11月15日にデンマーク・コペンハーゲンの「カフェ・モンマルトル」に出演したときの模様がライヴ盤として出た。これが世間的にはNYCFの唯一の記録とされている(2019年には1963年10月17日のコペンハーゲンの別の場所での音源も発掘されたようだが、LPでしか出なかったので私は聞いたことがない)。そもそもNYCFは、カフェ・モンマルトルでの出演が決まったから急遽集められたグループという面があったようで、ツアー終了後はすぐ解散してしまった。シェップとディクソンは翌年、契約していたSavoyレーベルを離れるさいに最後のアルバム1枚分を出す義務があったのでNYCF名義を復活させて録音したが、もうオリジナルメンバは集めなかったのである。だから狭い意味では、1963年の秋だけ存在したグループと言っても良い。

NYCFの特異性は、言ってみれば「あまり特異ではなかった」ことにあったように思う。米国はもとより、前衛音楽に理解のあったヨーロッパの聴衆でも、セシル・テイラーのようなリズムもメロディも旧来のジャズとはかけ離れた完全なフリージャズにはついて行けない人が多かった。その点、このグループは定常ビートに乗ってメロディも調性もあり、外形的にはビバップやモード・ジャズの素直な延長線上にある、いわば「フツーのジャズ」を演奏していたので、かなりとっつきやすかったのではないかと思われる。主要レパートリーの一つConsequences(チェリー作)が良い例で、これはI Got Rhythmというか、ジャズの基本のいわゆる「リズム進行」なのである。フリージャズの一般的受容を容易にしたのは間違いない。

だが一方で、フロント3人はそれなりに伝統を踏まえながらも好き放題というか、それまでのジャズをデフォルメするような感じでフリーキーに吹いている。要はアティチュードがフツーではなかったのである。ずっと後年のジャコ・パストリアスの曲に「パンク・ジャズ」というのがあるが、音楽的にはこちらのほうがパンク・ジャズと呼ばれるにふさわしい。ピアノレス編成、オーネット・コールマンやセロニアス・モンク、ジョージ・ラッセルといったあたりの曲が主要レパートリー、というのは現代ジャズの定番でもあるが、その原型は彼らにあるとも言える。

ところどころぎくしゃくしていて完成度は低いし、今となっては古くさく感じられるところすらある。だがそれは、彼らの試みが結果としてメインストリームの一部になってしまったからで、むしろ彼らのやろうとしていたことが決して的外れではなかったことを雄弁に物語っている。それでいて、本質的な新しさのようなものは録音から60年以上過ぎた今も全く色褪せていない。当人たちの手探りというか、何か新しいことをやってやるんだという自負が残照となって、今でも強烈にエネルギーを放っているからではないかと思う。

なお、元々NYCFのモンマルトル・ライヴは2枚のLPとして出たようだが、私が長年聞いていたのは1枚もののCDで、収録時間の関係でCisumという曲がカットされていた。今は探せば音楽配信で全11曲を容易に聞くことができるが、個人的には今ひとつぱっとしないCisumではなく、チェリーのやみくもなトランペットがある意味このグループの音楽を象徴しているようなConsequencesから(すなわちVol. 2の冒頭から)聞いて欲しいですが…。

comments powered by Disqus