トンボ リポーター スマートの話
ここ数年で一番派手にイノベーションが起こった分野は、ボールペンの世界だったような気がする。油性ボールペンには滑りが悪くて書きにくいというイメージがあったものだが、それが今では大きく様変わりした。その先駆となったのが三菱鉛筆のジェットストリームだが、あれを初めて使ったときはまあびっくりしましたね。「ジェットストリーム革命」みたいなものが確かにあったのだ。それが10年くらい前。
油性なのにサラサラ書けるジェットストリームのキモは、インクの粘性を下げてペン先と紙の摩擦を減らすことにあったわけだが、その後は三菱以外の各社も低粘度インクの開発に乗り出し、パイロットはアクロボール、ぺんてるはビクーニャを繰り出してきた。低粘度インクを使った多色ペンもがんがん発表され、折からの手帳やらメモやらライフハックやらの流行と相まって、ちょっとしたブームにもなったわけです。
そんな中、筆記具の老舗の割に今ひとつ動きが鈍かったのがトンボ鉛筆なのだが、そのトンボが2011年も末になってようやく出してきたのがこのTombow REPORTER SMARTである。私が飛びついて、今も使っているのがこれです。
もともとトンボはREPORTERというボールペンのシリーズを出していて、このREPORTER SMARTはその油性インクを自社開発の低粘性のものにアップグレードしたものという位置づけになる。私はこの旧REPORTERの4色バージョンを長いこと使っていた。ジェットストリーム等が登場したにも関わらず普通の油性ボールペンに過ぎないREPORTER4をわざわざ選んで使い続けていたその理由は、色によってノックボタンの形が全部違うという点にある。
ノックボタンの頭が平坦な山になっているのが黒、ふたつ山なのが赤、ひとつ山なのが青、丸い山になっているのが緑で、このおかげで、慣れればわざわざ見なくても手の感触だけで色を切り替えることができるのだ。これがどうにも捨てがたいREPORTERのメリットだった。多色ペンというと単に各色のボタンをノックするものから、ゼブラのシャーボXみたいに胴を回して切り替えるとか、果てはLAMY2000みたいに出したい色の印が書いてあるところを上に向けてノックするとかいろいろあるが、REPORTER式に慣れるとそんなのをいちいちやるのはかったるくなってしまう。というか、なぜ他のブランドはREPORTER式を採用しないのか?
世間では今ひとつトンボの低粘性インクの評判がよろしくないのだが、まあジェットストリームの異常な滑り具合には及ばないものの、発色も良いし、許容範囲ではないかと思う(リフィルだけジェットストリームの奴を切って入れ替えるという剛の者もいるらしいが、別にそこまでしなくても…)。ペン自体のカラーバリエーションも多いし、デザイン面でも大きめで金属製のクリップが効いていてちょっと洒落ていると思うのである。
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