Easy Walker / Stanley Turrentine

Easy Walker

書くべき原稿が、思った以上に進みませんでしてね。困り果てたのでこれを聞いている。

スタンレー・タレンタインは、本当はスタンリー・タレンティーンだと思うのだが、日本ではこちらのほうが通りが良い。アメリカでは大スターだったらしいのだが、日本では今も昔もあまり人気がないようだ。私は大好きで、60年代にタレンタインが残したブルーノート録音(これがまた佃煮にするほどある)は、CD化されたものであればほぼ全て持っていると思う。

タレンタインと言えば豪快なテナーマンというイメージが一般的だと思うが、その割にちゃんと聞くと案外線が細いというか、器用に何でも吹きこなす人で、その反面、たとえばジーン・アモンズやアーネット・コブが持っていた、ドスーンと腹に響くような真の迫力は無かったように思う。逆にそれが私のようなへタレにはちょうど良い湯加減で、胃もたれすることなく気軽に愛聴できるということになるし、アメリカで一般受けした理由でもあるのだろう。

このアルバムも我ながらうんざりするほど何度も何度も聴いているが、相変わらず楽しめる。なぜかピアノがマッコイ・タイナーなのだが(他にも共演が多いのでタレンタインのお気に入りだったと思われる)、1966年という「コルトレーン後」の時期の割に、見事にフツーでファンキーなピアノを弾いている。どの曲もいいのだが、最後におまけとしてビリー・コブハムがドラムを叩いた別の時の録音が1曲を除き全て収録されていて(最近『Ain’t No Way』として単体でも全曲CD化された)、特にオーラスを飾るアントニオ・カルロス・ジョビンの「Wave」は、あの洒落たボサノバを力技でジャズの土俵に引っ張り込んだ快演だ。

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