Live At The Village Vanguard / Michel Petrucciani

Live at the Village Vanguard

このライヴ盤を買ったのはずいぶん昔のことだが、最近までほとんど聞かなかった。ミシェル・ペトルチアーニを聞く頻度は、他のピアニストと比べてかなり高いにも関わらず、である。

なんで手が伸びなかったというと、理由の一つは良い作品が他にも多くあるからだが、最近たまたま聞き直す機会があって、これもまたペトルチアーニの傑作の一枚だなとようやく得心がいった。

というか、正直に白状すると、今までは最初のほうしか聞いていなかったのですね。で、冒頭を飾る「Nardis」と「Oleo」が、別に悪い出来ではないんだが、ややもったいをつけすぎというか、どこか無理をしている感じがして、今ひとつのめりこめなかった。まあ、録音当時ペトルチアーニは若干22歳、しかもヴィレッジ・ヴァンガードでピアノ・トリオでナーディスをやるということは当然ビル・エヴァンスを意識することになるわけで、肩に力が入らないほうがおかしいという話ではある。

で、最近はどうかというと、たまたまシャッフルでかかった終盤7曲目の「Three Forgotten Magic Words」がものすごく良くてはまってしまい、こればかり聞いている。曲自体はペトルチアーニのオハコで、他にも録音は残っているが、ここでの演奏が最高だと思う。自作曲だから当たり前と言われればそれまでだが、明快で力強くしかもロマンティックな曲想が、ここまで演奏者の個性とぴったり合致しているのも珍しい。俺はこういうのが聞きたくてジャズ聞いてんだなあとしみじみ思いました。

そのものずばりの音源はYouTubeに無かったが、これは翌1985年のヴィレッジ・ヴァンガード・ライヴ。このときはジム・ホールがゲストだったようだ。晩年はもう少しくどくというか、ショウマンシップ込みでこってりとした味付けの演奏をすることが多くなったペトルチアーニだが、心の赴くまま弾きまくるこのあたりの若々しい演奏も悪くない。

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