ジェリ・アレン
ここ半年ほど忙しくて世間と没交渉だったので、ジェリ・アレンが6月27日に亡くなっていたことを今ごろ知って驚いている。死因はガンだったそうだが、まだ60歳ですからねえ。ついでに言えば、アレンほどの大物でもウィキペディア日本語版に記事がない(2017年7月現在)ことを知って、そちらも驚きである。
ジェリ・アレンというと、80年代末から90年代にかけてチャーリー・ヘイデン、ポール・モチアンと組んで出した一連のピアノ・トリオ・アルバムや、ピアノレス・カルテットで有名なオーネット・コールマンのピアニストをあえて務めた二作が有名だが、個人的に今でも良く聴くのはMinor Musicから発表した最初期の作品群である。1986年のOpen on All Sides in the Middleと1989年のTwylightは愛聴盤と言っても良いくらいだ。一時入手しにくかったのだが、今はAmazon MP3で簡単に手に入る。
シンセの使い方など、今聴くと80年代的な「新しい古臭さ」みたいなものを感じなくもないのだが、スティーヴ・コールマンのM-BASEよりはとっつきやすいし、この時期のアレンに独特な浮遊感があって気持ちよい。というか、アレンが関わっていた初期M-BASEはワールド・ミュージック的な明るさに満ちていて、それが音楽的な難解さとバランスを取っていたように思うのだが、抜けてからはだんだん暗さや重さが勝るようになっていった気がする。
近年は音楽活動を続ける一方でピッツバーグ大学で教鞭を執っていたようだが、あまり話題になることは無かったように思う。少なくとも私は最近の活動をよく知らない。ただ、現在ジャズの最前線で活躍しているピアニストたちーヴィジェイ・アイヤー、クレイグ・テイボーン、マット・ミッチェルといったあたりーの演奏を聴いていると、執拗なフレーズの反復やパーカッシヴなタッチ、ひねったリズム、変拍子、素直にブルージーではない曲調といったあたりに若いころのアレンの面影を感じることがある。黒人性に頼らない現代的なジャズ・ピアニストの原型がアレン、といっても過言ではないように思われるのである。
個人的な思い出だが、アレンがヘイデン=モチアンとのトリオで演奏したI’m All Smilesという曲があって、すっかり気に入ってしまった私は、よせばいいのに大学の学園祭で弾こうしたことがある。それが全然うまく行かなくて…。
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