Comes Love: Lost Session 1960 / Sheila Jordan
これも去る2021年の発掘盤。
シーラ・ジョーダンは1928年生まれ、御年93歳でまだ健在(たまにライヴやレコーディングまでやっている)のようだが、なんというか不思議な人生を送ってきた人ではある。
先日亡くなったバリー・ハリスと同じデトロイトの生まれだが、50年代初めにはニューヨークに進出。チャーリー・パーカーらビバッパーと親しく付き合い、パーカー・バンドのピアニストだったデューク・ジョーダンと結婚した。ほとんどヴォーカルものを録音しなかったBlue Noteレーベルが1962年、なぜか初リーダー作Portrait of Sheilaを録音したことでも知られている。
このPortrait of Sheilaは印象的なジャケット写真も含めて高く評価されたが、直後にデュークと離婚。子育てのためしばらく音楽業界から離れて堅気の仕事に就き、70年代に入りようやく日本制作のアルバムで復活。その後もスティーヴ・キューンやジョージ・ラッセルといった一癖ある連中と組んで、面白い作品を残している。歌手というよりは器楽奏者に近いセンス(音楽理論をレニー・トリスターノに学んだという)と、独特の声質が魅力的である。
このPortrait of Sheilaより2年前、1960年のスタジオ録音を発掘したのがこのComes Loveで、数年前アルバカーキの中古レコード屋が大量に仕入れたアセテート盤のコレクションに紛れ込んでいたらしい。この後シーラは一時引退してしまい、次に吹き込むのは約12年後なので、極めて貴重なわけだ。
音質も内容も悪くないものの、35分弱とやや短く(デモ・テープ?)、伴奏するピアノ・トリオのメンツが誰なのか分からない。ディスコグラフィ的には謎が多いセッションである。シーラ自身もこのセッションについては何も覚えていないようだ。ピアノは当時鬼才ハービー・ニコルズが伴奏を務めていたこともあったようなので、もしかして…という期待もあったのだが、少なくともニコルズではなさそうである。ピアニストは割と特異なスタイルではあって、ロニー・ボールではないか、というのが今のところ有力な説だが、あいにくボールの演奏スタイルにそこまで詳しくないので、当方としてはなんとも言えないところ。
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