A Time For Love / Oscar Peterson

これも2021年の発掘盤。1987年、ヘルシンキでのライヴ音源。

何ごとも多作は基本的には良いことだと思うが、良くないこともあって、いくら一つ一つのクオリティが高くても、いっぱいあるとどうしても有り難みが薄れがちである。オスカー・ピーターソンも、もちろん生前は名声をほしいままにして没後も評価は高いのだが、なにせ長年に渡って活躍して膨大な量のレコーディングを残したので、未発表録音が出ても、またか、と言われておしまいということがある。ピーターソンの場合、スタイルがキャリアを通じてそれほど変化しなかったと思われていることもあって、とりわけその傾向が強いようだ。

レイ・ブラウンとハーブ・エリスを擁して地位を確立したギター・トリオ時代、エリスがドラムスのエド・シグペンに代わった「ザ・トリオ」時代、ソロ・ピアノ等にも挑戦して芸域を広げたMPS時代ときて、1980年代のピーターソンはあまり注目されることがないが、特にライヴで良い演奏を残していると個人的には思う。名手ジョー・パスを擁したカルテットを基本として、作曲家としても才能を開花させたこのころの演奏は、豪放というかいっそうスケールが大きくなっていて聴いていて気持ちが良い。この後はリウマチの影響かだんだんテクニックに衰えが見え、90年代後半以降は脳卒中の後遺症で片手しか使えなくなってしまうので、このあたりがピーターソン最後の輝きといっても過言ではないだろう。

レパートリーは、まあいつものピーターソン定食ではあるが、中ではいわゆる「バッハ組曲」がなかなか興味深い。先ほども書いた通り、ピーターソンはピアニストとしてあまりに派手なので作曲家としての才能が意外と見過ごされがちだが、これなんかはなかなか良く出来た曲だと思う。あまりバッハぽくはないけど…。他にも最晩年のBlue Noteでのライヴでもやっていたこれまた自作の「Sushi」とか、かっこいいですね。どこが寿司なのかよく分かりませんが…。

ア・タイム・フォー・ラブ - ライブ・イン・ヘルシンキ 1987 / オスカー・ピーターソン (A Time For Love : The Oscar Peterson Quartet - Live In Helsinki, 1987 / Oscar Peterson) [2CD] [Import] [Live]

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