Visage / Joe Douglas
いわゆる一発屋というか、一つだけ作品を発表して忽然と消えた人というのはジャズに限らずどんな世界にもいるけれど、このイギリスのピアニスト、ジョー・ダグラスに関しては(名前が平凡で検索に引っかかりづらいというあたりも含めて)本当に何も情報がない。他のリーダー作はもちろんサイドマンとして他の録音に参加した形跡もないし、2024年現在の生死も不明である。1979年の録音・発表で、ジャケットの写真からはまあ20代後半くらい、ということはおそらく1950年代かそのあたりの生まれだろうからまだ生きていても不思議ではないのだが、早々に音楽から足を洗って全く違う職業に就いたか、発表直後に夭折したかなんでしょうねえ。
サイドはベースがクリス・ローレンス、ドラムスがデイヴ・バリーと当時のイギリスのジャズ・シーンとしてはそれなりの人材を揃えていて、期待された新人という感じもあるのだが。ちなみにバリーはまだ健在なので何か覚えていることはないかとメールで聞いてみたが、返事が返ってこなかった。なお、音楽配信プラットフォームはもちろんYouTubeにも音源がない。今日日こういうのは結構珍しい。こんなものを昔の日本のレコード会社は日本盤CDとして出していたわけです。豊かな時代としか言いようがない。
内容としては全曲自作曲で固めていて、ダグラス自身のピアノ・スタイルにも即しているし、ジャズに限らずこの時期のイギリスの音楽に特有の切ない感じが横溢したなかなか良い曲ばかりである。作曲の才能もあり、ピアノの腕前も悪くないのに、なんで消えてしまったんだろうなあ。
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