ジョーイ・バロン・カルテットの渋い2枚

ジョン・ゾーン率いるマサダのドラマーとして知られるジョーイ・バロン、いつ見ても若々しいが、もう68歳なのですね。まあ1970年代から活躍していたから当たり前だが。

マサダに限らずジョン・ゾーンとの仕事の印象が強いのでアヴァンギャルド系サイドマンというイメージがあるバロンだが、オーソドックスなスタイルでの優れたリーダー作もいくつか残している。というか、私は彼が1990年代末に残した2枚が死ぬほど好きで、我ながらうんざりするほど聞いている。特に何も聞くものが無ければかなり高い確率でどちらかを聞いているというくらいで、なんだか人生のBGMみたいである。

1枚目は1997年のDown Homeで、これがいいんですよ。バロンのドラムスは当然として、ロン・カーターのベース、ビル・フリゼールのギター、そして今は亡きアーサー・ブライスのアルトサックスという、ある意味不思議な取り合わせ。それがばちっとはまっている。演奏しているのは全てバロンの自作曲だが、ドラミング同様無駄なくシンプルで、実にツボを押さえた名曲ばかりだ。バロンと同じく若いころは前衛方面でも名を馳せたブライスが悠々とメロウなサックスを吹き、とかくソロを取りたがるカーターは1サイドマンとして伴奏に徹し(それでもたまに短いソロはとるけど)、フリゼールはいつものようにやりたい放題色づけするという、カルテットとしてのまとまりも申し分ない。Spotifyにもあるのでぜひ聞いてみてほしい。

ただ個人的にさらに好きなのは2年後の1999年に全く同じメンバで録音したWe’ll Soon Find Outで、まあやっていることは基本的に同じなのだが(またもや全部バロンの自作曲だし)、こちらのほうが良い案配にくたびれているというか、英語で言えば world-weary とでも言うのか、すがれた感じが強い。でも変に斜に構えたシニカルなところは全く無く、酸いも甘いもかみ分けたという風情である。でもこちらはSpotifyにはなぜか1曲しか無い。どうして…。

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