最近のボブ・ジェームズ

最近NPRのTiny Desk Concertを見ていたら、ボブ・ジェームズが出ていて驚いた。演奏もなかなか良かった。iPadの譜面見ながら演奏しているあたりが今風である。

1939年生まれなので御年84歳。「若さはもう残っていないので雇うことにしているんだ」と自虐をかましていたが、確かにサイドマンたちは誰も若くてとても達者である(サックスはウクライナ出身らしい)。後半ではDJやラッパーも出てきて特に違和感がない。感心したのでこのライヴの下敷きになっている最新作も聞いてみたが、うーんそちらはそれほどでも…(笑)。ライヴで輝くタイプの人だったのですね。

ボブ・ジェームズというとスムース・ジャズやフュージョンの立役者の一人で、先日亡くなったデヴィッド・サンボーンとも共演作を残していたが、若いころの作品を今Spotifyとかで聞き直してもやはり今ひとつピンとこない。当方がスムース・ジャズというかバック・グラウンド・ミュージックみたいなものにあまり興味がないというのもあるが、でも特に音楽的というわけでもなかった私の家にすらボブ・ジェームズのLPありましたよ(「はげ山の一夜」が入っていたので今でも覚えている)。だから子供のときには聞いていたのだ。往時は一般的というか大衆的人気があったんでしょうねえ。

ボブ・ジェームズに関する近年の話題というと、エリック・ドルフィーの没後に発表された未発表録音でOther Aspectsというのがあったが、あれで一番衝撃的なトラック(おどろおどろしい歌詞を歌うカウンターテナーまで入っている)が 実はボブ・ジェームズの演奏だった ということだろうか。作詞したのもジェームズらしい。従来はピアニストは不明、曲名も(たぶん歌詞の一節から)Jim Crowとか適当に呼ばれていたが、ジェームズによると本当の曲名はA Personal Statementで、数年前に出たドルフィーのボックスセットにはこのときのアウトテイクが収録されている。

さすが鬼才ドルフィー、たしかに「別の側面」だ、とみんな感心していたのが、実はボブ・ジェームズが前衛音楽関係で助成金をもらったので、ドルフィーを雇って自分のトリオ、プラスアルファで録音した、という経緯だったそうだ。なにせボブ・ジェームズ、前衛の牙城ESP-Diskに録音があり、2020年に発掘されたOnce Upon A Timeも、オーソドックスなピアノ・トリオと言えばまあそうだが内実は結構ゴリゴリにハードコアである。サンボーンもそうだったが、あの世代のミュージシャンは(日本もそうだったが)若い頃にアヴァンギャルドを通過しているので、やはりひと味違うというか引き出しが多いのだと思う。

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