Blue Manhattan / Al Haig

1940年代にはチャーリー・パーカーのレギュラー・ピアニストを務めるなど活躍したアル・ヘイグだが、50年代に入ると次第に活動が低調になり、さらにはプライベートでもいろいろあったらしく、60年代になるとカクテル・ピアニストというかレストランで細々と演奏して糊口を凌ぐという有様になっていたらしい。わずかな例外を除いてほぼ引退状態だったわけだ。

そんなヘイグが再び脚光を浴びたのが1970年代で、1974年のInvitationを皮切りにイギリスや日本などアメリカ以外のレーベルに次々と録音して復活を遂げた。Invitationも良いアルバムだが、個人的には最晩年というかラスト・レコーディングとなってしまった1980年のBlue Manhattanが好きで良く聴いている。

理由は簡単で、曲がいいんですな。アルバムの前半はバド・パウエルのUn Poco Locoをやってみたり(当時のヘイグのレパートリーでライヴでもやったりはしているのだが)、あるいはコルトレーンのImpressionsをやってみたり、別に悪いわけではないが今ひとつ焦点が定まらないという感じなのだが、後半はアル・ゲイファ、ウェイン・ショーター、(オリジナル・リリースには入っていなかったボーナストラックだけど)シダー・ウォルトンと、世代的には脈絡は無いがヘイグ好みの作曲家たちの曲をやっている。

特にディジー・ガレスピーのバンドにいたギタリスト、ゲイファが書いた2曲は、ディジー・バンドでのオリジナルは正直そんなにぱっとしない演奏なのだが(タイトルもバルセロナはともかく、ゾンビ映画じゃあるまいし「生ける屍の国」とか意味不明である)、なぜかヘイグにはぴったりというか、ヘイグの手に掛かると実に良いドラマチックでたそがれた解釈になる。曲が人を呼ぶみたいなことはあるんでしょうね。例によって音楽配信はされていないのが残念。

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