Gayle Force / Buell Neidlinger

体調が悪いときだけ聞きたくなる音楽というのがあって、個人的にはそれはフリージャズ、フリーインプロだ。こちらが弱っていると、何かこう、やみくもなパワーのようなものを感じたいということなのかもしれない。

最近存在を知って喜んで聞いているのがこれ。2015年に出たようだがノーマークだった。Amazon.co.jpでCDは扱っていないようだが、Spotifyなど主要なストリーミング・サービスでは聞けるというあたりは現代風である。

セシル・テイラーやアーチー・シェップとの共演で知られ、2018年に亡くなってしまったベーシストのブエル・ネイドリンガーが1965年に個人的に録音したものだが、音質は生々しくて悪くない。ただタイトルも暗示するように、メイン・アトラクションはネイドリンガーではなく、若きチャールズ・ゲイルである。

1939年生まれ、1965年当時は地元バッファロー大学の助教として音楽を教えていた(フカシかと思っていたが、当時の新聞記事があるので本当らしい)ゲイルは、その後ニューヨーク・シティに上京するのだが、20年近くストリート・ミュージシャンというかホームレスとして暮らすことになる。80年代末にようやく出したアルバムが注目され、当時のニューヨーク・アンダーグラウンド・シーンと共鳴するような形で脚光を浴び、90年代以降は来日もしたし、家も借りられて、ピアノ・アルバムまで出して活躍している。ゆえに若い頃の音源は残っていないと思われていたのだが、それがひょっこり出てきたわけだ。とはいえ、コルトレーンともアイラーとも違う独特のスタイルはすでに完成されているので、あまり驚きはない。

この手の人にありがちというか、ゲイルもキリスト教を深く信仰していて、というか正直狂信の域に達しており、ライヴでもゲイや中絶に反対する演説をぶってひんしゅくを買ったりしていたようだが、まあ、個人的にお付き合いしたいとは思わないけれど、どちらかといえば私はオポチュニストより狂信者のほうが好きである。極道というと違う意味にとられそうだが、良くも悪くも一つの道を極めた人だけが持ちうる説得力がゲイルの音楽にはあると思う。

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