渡辺香津美レゾナンス・ヴォックスのかっこいい音楽

渡辺香津美が率いたグループで一番好きなのがレゾナンス・ヴォックスだ。共鳴する声、というグループ名からしてかっこいい。

前回書いた一連のMOBOものの後、ジェフ・バーリン、ビル・ブルーフォードと組んだトリオによるスパイス・オブ・ライフ名義の活動(メンツがバーニー・ブルネル、ジョン・ワッカーマンに代わったキロワットもこれの延長と言ってよいと思う)をしばらくやって、その後レギュラー・グループとして率いたのがレゾナンス・ヴォックスである。渡辺のギター、バカボン鈴木のベース、東原力哉のドラムス、八尋知洋のパーカッションという不動の日本人メンバで4年続いた。当時渡辺は関西テレビで「夢の乱入者」という、おそらくデヴィッド・サンボーンがホストを務めていたSunday Nightに範を取ったと思しいスタジオ・ライヴ番組をやっていて、そのセッション・バンドから発展したのがレゾナンス・ヴォックスではないかと思う。

第1作は1991年のパンドラで、CDの帯には「肝はROCK 精神はJAZZ FUNKな心に 頭BRAZIL」と書いてあるが、確かにそういう内容である。ヴァイオリンの金子飛鳥やアコーディオンのCOBAこと小林靖宏に加え、タブラのザキール・フセインや琵琶の陶敬穎など多国籍なゲストも入れて、ジャンゴ・ラインハルト風の曲もあればPeking Dollのように中華っぽい曲もあり、マーティン・デニーの(というかYMOのか)Fire Crackerまでやっている。多彩と言えば多彩だが、まとまりがないと言えばそれはそうで、またこの後の作品とは(ややガチャガチャしたジャケット・デザインも含めて)微妙にテイストが違うような気もする。

先にも書いたように、当時の渡辺は(今と違ってある意味世界の中心だった)テレビにレギュラーで出るくらい売れていた。

2作目は1992年発表のO-X-Oで、なぜかこれだけSpotifyなど音楽配信プラットフォームにあるのですぐ聞ける。チェスを模したメンバの胸像をあしらったジャケット・デザインも渋いが、音楽的内容も渋さというかシンプルさを増している。これも子供のころ図書館で借りて良く聞いたなあ。

で、3作目の1993年発表Resonance Voxが個人的には一番好きだ。グループ名をそのままタイトルにし、渡辺だけではなくメンバの作曲も増えて、ユニットとしてのまとまりが一層増したという感がある。シンプルになったと言っても複雑性が減ったのではなく夾雑物が減ったという感じで、一曲一曲はバラエティに富んでいて楽しく聞けるのだが、演奏は即興的な緊張感がある割に、どれもおそろしく手が込んでいて完成度が高い。はなれわざとしか言いようがない。

こうなってしまうともう先は無いというか、このグループで出来ることはやり尽くしたという感じがあったのか、1994年4作目のライヴ盤自業自得でレゾナンス・ヴォックスは打ち止めということになった。「夢の乱入者」のバンドでもサポートとして入っていた島田昌典のキーボードが加わっている。

内容の割に最近ではレゾナンス・ヴォックスはあまり言及されることがないというか、渡辺の仕事の中でも忘れられたバンドのような気がするが、あえて言えば、ジャズ好きにとってはフュージョン臭すぎて、でもフュージョン好きにはジャズ臭すぎるということなんですかねえ。個人的には、日本の「ジャズ」の最高到達点の一つという気がするのだが。

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