ミシェル・ルグラン
ミシェル・ルグランが亡くなった(The Guardianの記事)。86歳だから年齢的には大往生だが、去年の夏も来日してブルーノート東京で達者なピアノを弾いていたらしいし、先日パリを歩いていたら、地下鉄の駅に今年の春(たしか)シルヴァン・リュックとかとコンサートをやるというポスターが貼られていたくらいなので、死の直前まで元気に仕事をこなしていたのだろう。ある意味うらやましいことである。 世間的にはルグランは、「シェルブールの雨傘」などの映画音楽作曲家として有名だが、ジャズとの関わりも深い。「Watch What Happens」や「The Summer Knows」など、書いた曲が他のジャズマンに取り上げられることも多かったが、当人もジャズピアノが弾けてジャズアレンジが書ける人だったので、アレンジを提供したり、自分が仕切ったリーダー作もある。 最も有名なのは、アレンジではマイルス・デイヴィスはもとよりビル・エヴァンス、ジョン・コルトレーン、ベン・ウェブスターまで起用して大盤振る舞いの「ルグラン・ジャズ」だろうし、ピアノではレイ・ブラウンにシェリー・マンという名人級二人を従えた「シェリーズ・マンホールのミシェル・ルグラン」だろうが、どちらも個人的には、それほど惹かれたことがない。もちろん悪い出来ではないのだが、ちょっと甘口すぎますかね。
個人的には若いころの才気走った作品よりも、中年にさしかかった1970年代以降の作品のほうが、怖い物なしのやりたい放題感があって面白いと思っている。1978年のLe Jazz Grandはあまり有名ではないが、好きで良く聞く作品だ。フィル・ウッズがこれまた好き放題に吹きまくっていますね。
ルグランは根が派手な人なので、華のある人と組むと良い感じになるのだが、フィル・ウッズは特に相性が良かったようで、他にも良いコラボレーションを残している。1975年のImagesは、なにせジャケットがこれなのでいかがなものかという感じはするわけですが(でもこの作品でウッズもルグランもグラミーを獲っている)、そしてアレンジもまあ、若干甘口というかやや変ではあるのだが、腰を据えて聞くと結構良い。この時期のウッズ特有の迫力ある音色が素晴らしいですね。
ただ、個人的にこれは恐れ入ったと思ったルグランのジャズ仕事は、スタン・ゲッツと組んだ1972年のCommunications ‘72だ。スキャット・ヴォーカル(後年ルグランはヴォーカルに凝って、自らも歌っていた)もストリングスも入っている大編成もので、大体こんなのは珍作レベルで終わるところなのだが、ルグランの腕力とゲッツのカリスマで唯一無二の作品に仕上がっている。怪しげな音の密林の中からものすごい勢いで飛び出してくるゲッツのテナーが超かっこいい。
Archives
Tags