The Scorpion / Lou Donaldson

The Scorpion

1995年、unreleased sessions from the blue note vaults!と銘打ち、Blue Note Rare Groove Seriesの一環としてブルーノートの未発表作品がいくつか出たことがある。これはそのうちの一枚。タイトル曲(の別テイク)はThe Lost Groovesというコンピに入っていたので聞いたことがあったが、全体を通して聞くのは初めて。

1970年11月7日、ニュージャージーのクラブでのライヴ録音で、JazzWaxのインタビューを読むとドナルドソンは自身のベスト・アルバムの一つと考えているらしい。しかしAll Music Guideのレビューでは2つ星扱いで、「ちゃんと聞けば誰でも飽きるだろう」とか酷評されているのだが、うるせえなほっといてくれよ(笑)。これはドナルドソンのほうが正しい。傑作だと思います。

「レアグルーヴ」という言葉はもう死語だし、そもそも私の年齢だとレアグルーヴの全盛期はまだ子供だったので実態としてはよく分からないのだが、一方で私より年上の老害ジャズ・ファン(の一部)が持っている珍妙なジャズ・ファンク・アレルギー(オルガンが入ってるだけでダメ、みたいな)も無いので、フラットに評価できるというか、素直に喜んで聞いている。ドナルドソンは例によって快調だが、なんといってもドラムスのイドリース・ムハマドがビシバシ叩きまくっていて、もうこのドラムの音だけで飯が何杯でも食べられるという感じである。13分間以上地獄のようなグルーヴが続く大ヒット曲「Alligator Boogaloo」のライヴ版も当然良いが、個人的にはその直後、ドナルドソンが笑っちゃうくらいに美しい音色で朗々と吹き上げる「The Masquerade Is Over」が気に入っている。自分がやってきたのはファンクじゃなくてスウィンギング・ビバップだ、と言い張るドナルドソン大先生に頷かざるを得ない一曲である。

このアルバムには入っていない別テイクのほうですが。

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