アンドレ・プレヴィン

アンドレ・プレヴィンが亡くなった。享年89。

クラシックとジャズの二刀流というと、アンドレ・プレヴィンとフリードリヒ・グルダが双璧だろうか。どちらも本職はクラシックだったと思うが、余芸という感が強かったグルダに比べ、プレヴィンは1940年代から50年代にかけて、ジャズ・ピアニストとしても十分トップ・グループに入っていたと思う。

子供のころ、図書館で借りて初めて聞いたジャズのアルバムの一枚がプレヴィンのKing Size!だったので、個人的にもプレヴィンは非常に思い出深い人だ。自分でピアノを弾くときも、I’ll Remember Aprilはプレヴィンのアレンジを真似てやることが多かった。いうなればパクリですよ。

King Size!

プレヴィンは1929年(本人は1930年と言っていた)ベルリン生まれのユダヤ人で、ナチスから逃れて1938年、9歳でロサンジェルスに移住した。で、早くも1945年にはプロのジャズ・ピアニストとして、ハワード・マギーやラッキー・トンプスンといった当時の西海岸の一流どころを従えたリーダー作を録音している。16歳という早熟ぶりにもびっくりだが、アメリカ生まれでないのに、アート・テイタムやナット・キング・コールあたりに学んだと思しき当時最先端のジャズ・ピアノ奏法を体得していて、とにかく学習能力が高かったんでしょうねえ。このころの録音はPrevin At Sunsetにまとめられている。

Previn At Sunset

ジャズ・ピアニストとしてのプレヴィンが絶頂期を迎えるのは50年代に入ってからで、ハンプトン・ホーズあたりに通じる洗練されたブラックネスというのか、リズムやハーモニーの黒っぽいノリをこれまたあっさり体得してしまうのだった。この辺りは、あれだけテクニックがあったのについにジャズっぽいリズム感を体得できなかったグルダとは対照的である。リーダー作も前掲のKing Size!を始め何枚かあるが、サイドマンとしても活躍し、中でもシェリー・マンのMy Fair Ladyは評判になってよく売れたらしい。味を占めたのか他にもミュージカルのジャズ化を試みているが、まあこれに勝るものはないと思う。

マイ・フェア・レディ

ラス・フリーマンとのピアノ・デュオというDouble Playは、ジャケットも含めて珍作としか言いようがないが、これはこれでなかなか面白い。全部(若干)野球にちなむ曲、という企画も洒落ている。

Double Play (Remastered)

あまり知られていないが個人的に好きなのがライル・マーフィーのGone With The WoodWinds!で、タイトルはダジャレ、内容も往々にしてこの時期の西海岸もので見かける、アレンジ重視の頭でっかちな作品ではあるのだが、プレヴィンのソロは知的で抑制の効いた一級品だと思う。このあたりの演奏を聴いていると、気のせいかレニー・トリスターノの影をちらっと感じたりもする。

Gone With The Woodwinds!

プレヴィンは歌手の伴奏の達人でもあって、ドリス・デイと組んだ奴なんかはしみじみ良い。

デュエット

60年代以降はクラシックや映画音楽の世界の大物になって、ジャズどころではなくなったようだが、90年代以降はたまにジャズ・ピアノを披露することもあった。レイ・ブラウンやジョー・パス、あるいはマンデル・ロウと組んだTelarc盤が有名だが、ピアノは相変わらずうまいしそれなりに優れた演奏ではあるのだが、個人的には若い頃の覇気が今ひとつ感じられないというか、余裕がありすぎるというか、グッと来ないところがあって、あまり聞いていない。Telarcだから録音は素晴らしいのですが…。

After Hours

ジャズ・ピアニストとしてのプレヴィン最後の傑作は、これまたあまり知られていないが1963年の4 To Goですかねえ。シェリー・マンとの再会作で、50年代の演奏と比べれば甘口といえばまあそうなのだが、それなりにスリリングなところもあって、ハーブ・エリス、レイ・ブラウンと他のメンツも申し分ない。最近までCDでは手に入りにくかったのだが(私も2 in 1で一曲削除されている奴を長いこと聞いていた)、例によってAmazon様のおかげで簡単に手に入るようになったので、是非聞いて欲しいと思う。

4 To Go !

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