Solo / Benny Green

先日、丸の内コットンクラブアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの追善企画を見た。個人的には、大体において御大亡き後のゴースト・バンドの類にはあまり惹かれないのだが、今回はちょっと珍しいレパートリー(私が見たセットでは"This Is For Albert")も演奏してくれて、なかなか楽しめた。去年見たカウント・ベイシー・オーケストラも迫力があって結構良かったし、こういう企画も悪くないということなんですかねえ。

自分がピアノを弾くからというのもあるが、やはりメンバの中ではベニー・グリーンが光っていたように思う。見た目がなんだかスティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンみたいになっていて驚いたが(もう60過ぎなのですね)、フィニアス・ニューボーン・ジュニアばりの両手高速平行オクターブで弾きまくっていて圧巻だった。クラシックの素養があれば簡単なのかもしれないが、一体どれくらい練習すればああいうことができるのか、さっぱり見当がつかない。最近、タッド・ダメロンの"Hot House"のメロディを両手で弾きたいと思っているのだが全然できなくて困っているわたくしなどにとっては、全く想像の域を超えておりますです。

そんなわけで最近のグリーンに興味を持ち、2023年に出た(おそらく)最新作のこのピアノ・ソロ・アルバムを聴いてみた。これがなかなか良い。オーソドックスなスタイルのジャズ・ピアニストは世界中に数え切れないほどいるが、上手くてもどことなくカラオケ感というか物真似感が出てしまう人が多い。スタイルが借り物という感じがしてしまうのである。しかしグリーンにはそういう感じがなく、スタイルを完全に血肉にしているように思える。これは言うほど簡単なことではないです。

とはいえ、これはグリーンに関して昔から思っていることだが、突き抜けたものがないというか、どこか物足りなさを感じてしまうのも確かだ。「ある程度まで行くと止まる芸」と評された落語家の話を聞いたことがあるが、なんとなく似たところがある気がする。Down Beat の記事などを見ると、当人も「知らず知らずのうちに少し型にはまった演奏をしていた」などと言っていて、限界を感じていたようだ。ただ、ソロ・ピアノだからかもしれないが、今回のは昔と比べるとしみじみとした味わいや中身の充実感のようなものが増しているように感じた。昔はよく来日していたので、またピアノ・ソロやピアノ・トリオでじっくり聴きたいものですね。

見た目がとっちゃんぼうやみたいなずいぶん昔の演奏だが、途中で例の両手決め技をビシッと決めている。かっこいい!

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