あるノマドかばんの話
タイトルは釣りです。
基本的に職場と自宅を往復する人生を送っているのでノマドもへったくれもないのだが、まあとりあえず日々移動はしているわけだ。それはさておき私は年々人間がだらしなくなってきていて、最近ではどうも鞄が重くて仕方が無い。革鞄など持つ気もしない。リュックを別とすれば、今メインで使っている手提げ鞄は EasternShapeのPhaedra Tote Bagという実によく考え抜かれた鞄で、1020gとこの種のものとしてはそんなに重くはないのだが、あまりマチがないためジムの着替えと本を数冊入れるとパンパンになってしまうという問題がある。あとまあこれはいちゃもんみたいなものだが、私は多くの場合茶色の靴を履いているので、黒のナイロン鞄であるPhaedoraだと色味が合わない。Phaedraのブラウン・バージョンは昔あったらしいのだが、茶色どころか黒すらもう製造中止だ。というわけで、茶系の色で軽い鞄を探していたわけです。
しばらく通販サイト等を物色してもなかなかこれと言ったものがなかったのだが、ふらっと原宿のアシストオンに立ち寄ったらこの鞄が目に入った。SIWA(紙和)というブランドの、持ち手だけレザーであとはどう見ても紙で出来ているという不思議なトートバッグである。
見た目が紙袋、というのは当たり前で、この鞄は実際「紙」で出来ている。といっても単なる紙袋だと耐久性や耐水性、および美観の面で大いに問題があるわけだが、この鞄で使われているナオロンという素材は木材パルプと合成パルプを混ぜて和紙ふうに漉いたもののようで、紙は紙なんだけど紙にはあるまじき強度と良い風合いを持つ。猫がひっかいても破れない障子紙というのがそもそもの出発点らしいのだが、水に濡れたほうがむしろ丈夫になり、荷重も10kgまで耐えるという触れ込みである。SIWAを手がけているのは大直(おおなお)という山梨の和紙メーカーだが(だからナオロンなのか)、障子紙がメインのビジネスではどう考えてもじり貧なわけで、こういう方向に打って出るのは素晴らしい。吉祥寺ロフトに直営店まであるようだ。ナオロンを使ったSIWAの他の鞄や小物類はアシストオンの通販ページでも扱いがあるのだが、なぜかこのレザーハンドルトートはないので、実店舗限定販売の商品らしい。ちなみに Amazon.co.jpでも扱いはない。ブランド直営の通販ページにはある。
アシストオンの通販で買える普通のSIWAトートバッグも悪くはないのだが、持ち手もナオロンなのがひっかかる。この素材は見た目や質感などは決して安っぽくはないものの、いかんせん紙なのでごわごわして手触りがよくない。ハンドルだけ革になっていれば、当然この手触りの問題はないわけだ。ハンドルの長さはそれなりにあるので、肩がけすることもできる。
さらに、以前何の気無しに飛行機の手荷物入れや電車の吊り棚にトートを置いたら、何かの拍子にひっくり返って中身を盛大にぶちまけたという苦い経験があるので、トートは上が閉じられるとありがたい。このレザーハンドルトートは上にファスナーが付いているので、この点でも私の要望を満たす。さらに、正面から見るとよく分からないのだが、この鞄はマチが三角形になっていて底鋲も打ってあるので、かなりの容量があり、かつ安定して自立する。というわけで、機能面ではケチのつけようがない。デザインはINFOBARやLAMY Notoで有名な深澤直人が手がけたそうだが、さすが、という仕事ぶりである。おまけに値段も1万円以下なので、革鞄と比べれば、というかナイロン鞄と比べても圧倒的に安い。耐久性に関してはまだよく分からないが、傷んだら買い換えればよいと割りきっても十分な値段だ。色はブラック、ダークブラウン、ダークブルー、サイズもS・M・Lと揃っている。私のように13〜14インチのラップトップを入れるならサイズはMで十分だろう。
そんなわけでダークブラウンのこの鞄を買い、同じナオロン製のクッションケースLargeというのも買ってラップトップを入れ持ち歩いているのだが(MacBookAir専用サイズというのもあるらしい)、鞄本体が150g、クッションケースが78gという、鞄だけなら228gという軽量化が達成できた。実に快適で、鞄オンリーでも3kgとかいく場合もある革鞄は一体なんなんだという話である。できるだけ鞄は軽くしたい、でもふつうの紙袋から立ち上るホームレス感は回避したい、という人には実用品として広くおすすめできると思う。
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